新・やさしい流星観測(1)

 今回から三回に分けて流星観測を初めてやってみようという会員の皆さんにあてて、いろいろなノウハウをお伝えしたいと思います。また次回は、ちょっとした味付けで世界に通用するレベルへと加工する方法もお届けします。( 河越 彰彦 )


☆新しいスタイルで初めてみませんか?

 流星観測を初めて行う時は無理せずに肉眼で観測しましょう。これは「眼視観測」というまじめな観測方法ですがその内容は半世紀以上も前に作られたもので、一部は今の時代に合わなくなっています。図1は筆者が考案した形式で三十年も前から使っています。大きく変えた点は継続時間という項目の削除です。流星が発光していた時間を目測するのは至難の業です。現在は継続時間の測定はカメラなどに任せ、眼視観測はもっぱら光度とみかけの速さの測定を優先しています。これが現代の合理的なスタイルです。

 一時間(30~90分範囲)ごとの流星数を並べるのは記録用紙のHR欄を使います。HRの時間変化を調べれば極大時がわかります。分単位で知りたいときは一時間より短く区切って調べますが、数が100個以上ないと調べる意味がありません。


☆眼視観測はレベルが低いと思いこんでいませんか?

 感度カメラで楽々撮影しても、写った流星の位置測定は楽でも完全自動ではありません。人工衛星や飛行機はいちいち確認して除外するなど後処理が大変です。さらに写角の端や暗い、速い流星などはその測定に時間がかかります。この膨大な作業を手抜きすれば精度が落ちてせっかくのカメラ撮影の利点がなくなります。その点、眼視観測はカメラ並みの精度には及ばないものの、まあまあの成果が得られ観測数が多ければ統計的に誤差をキャンセルできる利点があります。だから眼視観測はもっとも手軽にできる手法で、適切な研修を受け練習をすれば十分現代に通用する観測手法です。レベルが低いのはその指導方法に問題があるからです。


☆流星の数に重点を置いた計数観測と、位置に重点を置いた記録(プロット)観測

 どちらも大切な方法で調査目的によって選択しますが、まず必要なのは星座や主な恒星の位置関係の把握です。これをしっかり自分の目で確かめておくことが一番です。図2は何を調べるか、とそれに必要な方法を記したもので、目的を観測前に定めておくことが重要です。初めての場合は計数観測がお勧めですが、見た流星が目的とする流星群に所属しているかどうかを判断するために、星座や星の位置関係に慣れる事前練習が欠かせません。経験豊富な指導者がいれば短期間で研修ができます。パッパッと星の配列が紙に描ければ合格です

☆まずは活発な流星群を計数観測しましょう

 近くに経験者がいればお互いに比較検討しましょう。もしあなた一人であっても心配には及びません。どんな経験者であっても目測誤差や個人的なクセがあります。はじめての観測では思い切って「024RMS法」を使ってたくさんのデータをとりましょう。これを整理することでいろいろ傾向が見えてきます。024RMS法の詳細は図3をご覧下さい。

☆観測結果のまとめのポイントは一時間単位(大原則)

 国内の人々や外国の観測と結果検討するためには、一時間(日本標準時)ごとの流星数が必要です。いろいろな事情で一時間かっきりでない場合は30~90分の範囲で60分相当に比例計算します。例えば8月13日1時0分開始、同日1時45分までの45分間なら、60×流星数÷45の比例計算。また3時05分開始4時15分までの70分間なら、60×流星数÷70の計算です。これを一時間出現数(HourlyRate略してHR)といい、もっとも基本的でもっとも重要な数値です。なにはなくともHRを求めることが大切です。図1を参照して下さい。


☆すぐ見られる「みずがめ座η(エータ)流星群」でトレーニングを!

 この流星群は毎年おもに5月5日未明、東の空から飛来します。だいたいのHRは5程度なので驚くほど多くは出ないけど、落ちついて練習するには適しています。今年は満月がおとめ座にあり悪条件ですが明るい流星も多いので夜明け直前までに5個程度は見られそうです。夜明けが早いため1時から開始して下さい。流星の吹き出す中心を放射点といって、みずがめ座の三矢サイダーの愛称をもつγζηπ星で作る星群の近くにあります。1時半前に東の地平線に上がって来ますが、ここを睨んでも成果はありません。放射点が地平線近くにある場合、流星はそこからかなり離れた星座に長い経路をもって現れます。わし座とか、こと座を見ていればキャッチできる確率が高いです(図4参照)。みかけの速さがとても速く、飛行経路に痕(こん)という雲状の筋(電離物質・イオン)を残すので、ひと目でみずがめ座η流星群だと判別できます。月光の中カメラ撮影の場合は、これらの星座が狙めです。天候は北高型気圧配置になることが多く太平洋側は曇りますが鳥取県は好条件です。以下に、記録用紙と経路記入星図を掲載しますので、ご利用ください(「名前を付けて保存」して、大きくプリントアウトしてご利用ください)。

 次回はより端的に少しグレードアップします。以上。

鳥取天文協会 Tottori Society of Astronomy

鳥取天文協会は鳥取近隣の天文愛好家で作るグループです 以下に引っ越しました https://toritenkyo.blogspot.com/

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