アマチュア流星観測最前線⑤「写真・ビデオ観測編」
1990年代(平成初期)に入ると観測形態が大きく変化した。みなさんご存知のデジタル化である。初期のデジカメに「何だこりゃ、おもちゃのようだ」と笑っているうちに、画素数がどんどん増えて笑っていられなくなったことを思い出す。もうひとつは高感度化である。筆者は眼視観測を主体に行っていて、所詮カメラは2等級より暗いものは無理で、眼視の牙城だと安心していたら、イメージインテンシファイヤー(略してI・I)なるものが民生用で出てきた。2万倍とか5万倍に増幅するから、満月を視野に入れたらダメとか言われ驚いた。この高感度カメラはアナログだったが、家庭用ビデオカメラに入力すると動画が1/30秒毎にキャブチャーされ、流星の光度変化の解析に威力を発揮した(下図はその例)。
筆者も1997年に貯金をはたいて購入した。5等級の流星が多数撮影されたり、肉眼では見逃してしまうほど高速の流星もキャッチできて、未知の微光流星群が発見されたり、通常の流星群の構造が解明されていった。但し、I・Iには寿命があり約200時間を過ぎた頃から、世代が寿命のないデジタル高感度カメラに交代していった。2010年代後半はソニーのα7sに代表される高感度(ASA12000とか!)カメラがあちこちで動き始めた。この頃までにフィルム使用の写真観測は完全に終りを告げ、写真という言葉さえ死語になった。現在はビデオとかTV観測とか言うようだ。そして観測の方向も大きく2方向に分かれ始めた。ひとつは完全に眼視観測の夜間代行をして、流星をたくさん捕らえ流星群をカバーする分野。もうひとつは流星のスペクトル観測の分野である。次回はスペクトル観測をご紹介したい。( 河越 彰彦 )
左は火球の合成画像。右は同火球の光度変化の測定4次近似結果(撮影・測定は河越)
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