アマチュア流星観測最前線④「第一人者活躍編」
2019年9月27日に天寿を全うされた、藪保男先生が日本のこの分野において第一人者でした。これは先生が流星観測研究の全盛期を創られたことで多くの人の知るところです。このシリーズの初回に紹介した、1960年代の全国観測網充実は藪先生の超人的な尽力の結果です。
実は先生の師匠は小槇孝二郎先生(流星観測の父)で、69年に急折されました。この時リーダーを失った流星界の前途は危ぶまれましたが、藪先生はすぐ遺志を継いで、その中心になるシステムを短期間に確立され、混乱を防がれました。日本全国からの観測結果の一元収集、整理、分析、回報原稿編集の他に自らの流星観測(毎月観測量ナンバーワン)、そして若年観測者の指導、各種集会への参加、啓蒙活動が毎日のように続きました。
先生は中学校の教師をされて、その後教育委員会のお仕事もされて、さらに知る人は少ないですが、東亜天文学会の事務もと超多忙でした。眼視観測がメインでしたが、自宅観測所には回転シャッター(流星の継続時間を測定するための回転羽)付カメラもあり、写真観測もされるなど、活動は留まるところがないほどでした。その結果として後年、第一種流星観測者認定を授与されましたが、これは全国に三人しかいない達人です。
今世紀に入ってからも国際学会やシンポジウムに精力的に参加され、後進の指導をされていましたが、先々月87歳の生涯を閉じられました。最期のお別れに参列できた私は偉大なひとつの時代の終焉を感じたと同時に、後を継ぐ私たちの責任も痛感しました。今回の訃報は「巨星墜つ」ではなく、まさしく「巨星天に昇る」であると思われます。さらに一ヶ月後に長沢工先生の訃報に接するという悲劇が続きました。長沢先生については機会を改めてご紹介させていただきます。合掌。( 河越 彰彦 )
藪保男さん(1978年夏 撮影)
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