2021年6月のIAU(国際天文学連合)リストの流星群活動チェック
A activity check of IAU shower list by visual observation on June 2021
河越彰彦
突発流星群2個を確認
ノーマークの流星群の突発出現は著名な流星群活動のない6月では驚異的事件である。それも全国的に悪天候で、幸運にも筆者の地方だけが雲がなく。突発出現が観測できた。さらに驚くことはあれほど多数稼動しているカメラが曇天のため休止していたのである。もっと端的に言えば、国内で観測できたのは筆者だけかもしれない。
別表の№170、6月うしかい群と№166、6月こと群がその突発出現流星群である。実はこれらの流星群はカタログ通りでない曲者である。詳しくは本稿の後半で解説する。
突発群以外で確実なのは、βわし群だけ
6月は表1のように延べ55時間余の観測をして表2の結果を得た。いつものことながら第2級の流星群の多くは活動が認められない。その8割が未確認である。
このほか弱い活動が認められたのは13個群。このうち7個は南天の、さそり・いて座流星群に属する。以前にも触れたように眼視観測では詳細な区分が困難で、まとめて黄道型流星群の。さそり・いて座群として捕らえることができる。活動確実なβわし群もこれに所属すると思われる。各夜の出現状態は別表に示した。
曲者の突発群解説
IAU(国際天文学連合)リストに便宜上合わせると、№170、6月うしかい群が近い。実際の放射点はリストの位置よりも12度離れたα234°δ+52°。この付近には過去ポン・ウィンネッケ彗星やシュワスマン・ワハマン第三彗星に関連する流星群が出ている。今回の突発群との関連は今のところ不明であるが、6月23日の22時台(23.56UT)に4個が集中出現していて他の時間帯には見られていない。巻末の補足項を参照されたい。
IAUリスト№166、6月こと群に似た突発群。6月24日夜に出現。観測放射点はα282°δ+38°でリストとは日数で9日、位置で17°も離れている。全く別の流星群の可能性が考えられる。他の地方の観測データは曇天のため確実に観測したという報告はない。
全体的に第2級の流星群の確認率が低い。眼視観測だから見つからないのか、実在しないのか断言は難しいが、数年観測すれば結論が出ると思う。以上
6月23日22時台の突発流星群に関する補足
上述の突発群の正体を知るため軌道計算を試みた。その結果を表3に示す。
ポン・ウィンネッケ彗星は木星族であるから、この彗星由来の流星群であるならば遠日点が約5天文単位(AU)である。表3の太字がそれに近い。降交点出現で地球との距離は 0.017AUで可能性は有望である(0.02AU 以内は有望範囲)。以上の計算結果を付き合わせると、ポン・ウィンネッケ彗星に良く似た天体に起源をもつ流星群ではないかと推定する。
下図は観測に用いた経路記入用流星図である。
北斗七星の柄の先端η星と、りゅう座頭部のγ星を結んだ線の中点付近が放射点である。明るい恒星のない部分で、流星の経路記入に苦労するが、星図に記入した補助線のお陰で流星の経路記入が楽であった。以上。
0コメント