2020年12月のIAU(国際天文学連合)リストの流星群活動チェック
はじめに
ふたご座流星群のような大きな流星群は観測する人も、観測時間も多いので活動の全貌はよく知られている。しかしその他の小さい流星群は詳細が不明である。その流星群は標記のIAUの流星部門で一括管理されているものの、筆者は近年その内容に疑問を持つに至った。疑問点を列挙すれば長くなるのでここでは触れない。その代わりに毎月観測して活動を調べてみて問題点を考察することにした。2021年の主要テーマである。
観測体制
一夜当たり少なくとも2時間、可能なら3時間を一単位として、連続2夜実施する。これを月光の妨害のない3週間行う。月間合計6夜12~18時間の観測データを分析してIAUリストアップの流星群の活動評価をする。このリストは大きく3種類あるが主にWorking listを用いることにした。
評価方法
眼視観測手法(カメラは多数撮影されているが生身の人間と同一視できない)で都市近郊を観測地とする。これは人工灯火のない地点での結果と簡単に比較できないからである。
ポイント評価を対象とした流星群に以下のように与える。等差評価ではない。
0 活動なし、あるいは活動が確認できない。
1 所属すると思われる流星が1個。恐らく散在流星と思われる。
2 同3個以内。存在しても散在流星レベルと区別分離不能。
5 一晩に4個以上。活動は確実で放射点が求まる。
10 前後の夜にも確認できた。安定した流星群として確立された。
12月の結果
下表に示す。これはふたご群の計数観測を除く河越12夜2865分と斉藤和子8夜1900分、合計延20夜4765分の観測データを分析した。そのためセルにポイントが二つある。
活動が確実で安定しているものは対象とした53群のうちIAU 記号DAD(12月α竜座流星群)ただひとつであった。また、IAU 記号D0U(12月ωおおぐま座流星群)とVCF(4・りょうけん座流星群)は存在していても散在流星との区分分離ができなかった。残りの50群は活動していないか、活動が確認できないものであった。
尚、IAU登録以外の流星群も検出されているが、主題と混乱するのでここでは触れない。
考察
DAD(12月α竜座流星群)はWorking listに入っていないのみならず、活動期間もリストとは異なる。これではリストアップの意味がない。良く解釈すれば確認を要する流星群だからWorking listにもEstablish listにも分類されていないのであろうが、少なくとも日本ではカメラ観測で比較的長い期間にわたって活動していることが捕らえられている。この情報がIAUに届いていないか、届いていても認めてもらっていない。こういうのを見ると我が国の観測結果は重要視されていないのではと懸念される。もしも論文にしないと採用しないなどの規定があれば、前時代的な権威主義を感じざるを得ない。どちらにせよ実際の流星観測者からみて有用性に疑点が残る。今年1月から活動チェックを続けていくが、その都度問題点は考察する。
総じて、二人延べ4765分(約79時間)観測してこの程度の活動しか捉えられなかった、この効率の良し悪しも今後の研究課題である。
別表の補足解説
IAU リストでは活動日を太陽黄経で表している。12月1日がおよそ280度に相当する。リストといいながらデータベースのようなものなので、活動期間の記述がない。そこで表示された太陽黄経の前後5日間活動しているものと見なしてチェック幅を持たせた。実際にはこれが不明であるから上述のDAD(12月α竜座流星群)のような不一致が起こる。今後のチェック作業に煩わしさが生じそうである。(河越 彰彦)
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