流星観測体験の記録の整理

 去る8月12日、さじアストロパークで流星観測体験をしました。参加された方から任意でデータを頂きましたので、それを使って以下にまとめました。


分析に際して

 データ提供くださったのは、公立鳥取環境大学の足利教授と学生さん七人です。
 別表に時系列観測データ一覧表を示します。四人ずつの観測班二つを観測方向を揃えて並べると、二つの班が同じような推移を辿った様子がわかります。
 即ち、各々自分の担当した観測方向を守り、可能な限り流星のデータ採取に努力しています。この夜が全く初めてのグループ計数観測(正しくは多重計数観測という)とは思えないほど整然としたもので、他のお手本となる観測データです。


分析(ここから)何がわかるのか?

①真の流星数
 あれだけの観測者がいても誰も見なかった流星があるかも知れません。それは確率的に計算しますが、本当のことは誰もわかりません。余事象という考え方で計算すると2時間で第一班が62個、第二班が61個です。20個近くも見逃していたとは驚きですが3等級でも視野の端に出ていたらなかなか気付きません。見逃した流星は別として捕らえた流星数を別表から拾っていくと表1~3のようになります。

②ペルセウス座流星群の出現数
 結論、表3の( )内数値がそれです。グループ計数観測、21時台HR4。22時台HR11~15。(HR=Hourly Rate 一時間出現数のこと)
 最初の一時間に比べ次の一時間で急増しているのが良くわかります。そして二つの班ともに似たような数値傾向があります。このことから彼らの計数能力の均一性が、ひとりひとりでは個人差があるもののグループ処理することで補完しあった結果、適正なサンプリングがであったことがわかりました。


③数カウントだけでわかる空間密度
 別表で一分刻みや一分以内に2個流星が観測されている頻繁性を、空間密度という観点で考察します。班ごとではなく全体で出現時刻間隔を調べてヒストグラムを作ります。図1が結果です。

 次に、以下の基本量を定めます(図2参照)。
  流星が出現する高さ「地上100km」
  観測者(グループの場合は中心位置)の視野「半径60度」
  地球の自転速度「30km/sec」

 地上100kmにできる円の面積は「半径×半径×π」、半径は100√3だから面積「3×10^4π平方km」、この円が秒速30kmで進むので、できる円柱の体積は一分間(60秒)では「5.4×10^7π立方km」。約169×10^6立方kmになります。ピンとこないので立方体に換算すると一辺550kmの立方体になります。この長さは東京~岡山間です。

 図1では最頻値が1分ですから、1分間隔で流星が出ても、半径が東京~岡山間距離の立方体のなかに流星が1個という計算になります。意外にスカスカだとわかります。これは概算です。より厳密にするとさらにスカスカです。

 でも経験上、極大に近くなると最頻値が1分以内になり密度は倍になります。別表を見ると出現間隔は23時に近づくと短くなっていくのがわかります。地球が流星群の流星集団の濃密部に近づいている証拠です。


さらなる解析

 今回は初めてでしたから観測に慣れることに重点をおきました。次回また観測する機会があれば、さらに光度やみかけの速さについてもしっかり記録をとり、解析に役立てたいと思います。
 簡単な眼視観測からでもいろいろな事柄がわかり、新しい知見も得られます。


今回のまとめ

 4人でのグループ観測すると、ひとりで見ている数の約4倍みられるが、それでもまだかなりの見落としがありそうだ。ペルセウス座流星群極大日21時台HR4。22時台HR11~15であった。極大時刻に近づくにつれて出現間隔が狭くなるが、空間密度を考えると意外にまばらである。今回の計数観測は初めてとは思えないくらい適正なサンプリングであった。


【追記】

流星をもれなく観測するための課題

 4人グループではまだ夜空を 隙間無くカバーしきれていないことがわかりました。完璧な捕捉システムを作るには以下のようにすると良いです。

 ①人数を増やす。経験的には6~7人がベスト。

 ②両隣のひとの担当領域との境界をダブらせる。

 ③グループに一人記録選任をおく。記録中の見逃しをなくするため。


グループ計数観測の多重化

 筆者が大学生時代にペルセウス群観測に採用した方法は前述の課題を検討して、HR>100の流星出現をほぼ完全記録できました。大切なのは多重化です。カバー領域に隙間を作らない、観測時間帯に穴を開けない。仮に誰かが一時的に何かの理由で目を離しても隣接メンバーがカバーできるような多重化です。そのときの実例を参考表に示します。


流星観測グループリーダーを決める

 皆でアイデア出すのは重要ですが、それをまとめて多重補足システムを作るのは専任リーダー(会長でも。副会長でも一般会員でも可)の仕事です。担当割、記録書式、時刻表示方法を検討して下さい。筆者の経験では、流星がでると「3番1P」などと目をそらさずに記録係に伝えます。記録係は専用のシートにもれなく記入していきます。そして一分毎(実例では5分毎)に時刻を区切ります。

 末筆になりましたが、当日の参加のみなさん、スタッフのみなさんまたの機会にはよろしくお願いいたします。(河越彰彦)


鳥取天文協会 Tottori Society of Astronomy

鳥取天文協会は鳥取近隣の天文愛好家で作るグループです 以下に引っ越しました https://toritenkyo.blogspot.com/

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